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施設のできごとや行事、イベントなどの様子を更新していきます。
介護保険の目的
2024-12-07
目的とはなんだと思いますか?
すぐに思い浮かぶのは食事や入浴、排せつの介助等の療養上のお世話、あるいは見守りや健康管理、感染症や転倒予防かもしれません。
介護保険法の第2条第2項で、保険給付の目的は何だと謳われているかご存知ですか?
要介護状態等の「軽減または悪化を防止」、つまり自立支援なんです。
措置(老人福祉法)時代は療養上のお世話が目的でした。
それが2000年、介護保険法が出来て、目的は自立支援になりました。
更に2003年には尊厳を支えることが掲げられ、2010年から地域包括ケアへと流れが移ってきている。
にも拘わらず、未だに療養上のお世話に留まっている事業者が非常に多い。
みなさんの事業所はどうですか?
ケアにおいて最高の状態は、回復を目指すというもの、ただし、それが難しいこともあります。その場合でも保険法の目的から考えても現在の機能を保つように努めることが重要。それも難しい場合、最期まで寄り添うことがケアする人にできることです。
みなさんは自分でできることやできるようになることをさせずに療養上のお世話をして、どんどん状態が悪化していく、そういった害を与えることが介護だと思いますか?
出来ない部分をただ埋めてあげるのがケアではない。自立支援を促していくのがケアする人の役割である。間違っても自分がされたくないことはやってはいけない。
「~さんに」というものは業務。
「~さんと」というものは自立支援。
「~さんが」というものは社会参加。これこそが真の自立です。そのためには地域に出ていかなければならない。そしてそれは地域包括ケアという流れと一致します。そのために必要なことは以下の通り。
・利用されている個々人に合わせた自立支援のサポートの実現。
・地域の方の出入りが頻繁にある開かれた交流の場となっていること。
・高齢者自身も地域に出ていき、地域づくりに貢献していく。
・なにより、高齢者が主体的な活動を行い、自立心、尊厳が守られている。
・結果として、高齢者自身の介護度が維持・改善されている。
ある施設の取り組み例として、お鍋を一緒に作る際に「一緒に料理をしましょう」というような呼びかけはしません。「こんにゃくは切った方がいいのか、手でちぎったほうがいいのか」と相談します。しまいには「男が台所に立つもんじゃない」と職員を押しのけて包丁を持ち、調理を始める始末です。
もしかすると、認知症の方に鉈(なた)を持たせるのは危険だと思われるかもしれませんが、ただちょっと考えてほしい。鉈なんて使ったことのない若者にもたせるほうが遥かに危険です。包丁だって、料理をほとんどしたことがないような人よりも長年台所に立ってきた方の方が上手に、早く、安全に扱える。認知症であってもなかなか消えないのが手続き記憶。長年の習慣の中で体が覚えていることなんです。
アセスメントの際に、その人の職歴や今までのことはきちんと聞いていればこの人は何が出来るのか、何が得意なのかを理解するのは難しくないはずです。
認知症ケアで大切なことは
・「危ないから」「〇〇でなければならない」は絶対にタブー!やれない理由を探さない。
・認知症で困っている人が困らないように寄り添えば素敵なお年寄り!
・「見て」、「触れて」「しゃべる」が何より重要
・否定しない。
・できないではなく、まずはやってみる。どうしたらできるかを考え、方法を探る。
・高齢者がやろうとしていることを止める言葉や気持ちを妨げる言葉は不要。

自己選択と自己決定
2024-11-07
- 自己決定
高齢者が、自分自身の意思で選択し、最終的に自ら決定することを指します。介護者には高齢者の自己決定の機会を確保すること、妨げられないようにすることが求められます。自己決定には、本来は決定した本人の責任が伴うことから、介護者は利用者が自己決定できるための十分な情報を提供しなければなりません。認知症や障がいによって自己決定が困難であると考えられる場合であっても高齢者の意思意向を確認し、尊重できるように支援する必要があります。
- 選択することの重要性
選ぶことは、どんな小さなことでも人生の選択です。自分が納得し、自分らしい生活を送るには自己選択と自己決定できないと、尊厳が保たれる生活とは言えません。自己で選ぶことを支援することが大切なわけですから、こちらが指示するのではなく、選ぶお手伝いをするという事を考えることが大切です。自分で物事を決めることは、自分の人生を歩んでいるという実感を生み出します。ご本人の意思を尊重することは、「その人らしく生きること」を応援することになります。自分の意思を尊重されると、周囲に対して信じられることが、ご本人の心のよりどころにもなります。
- 選択のパラドックス
選択肢が多いと何かを選択した後に、もっと良い選択があったのではないかと後悔の念が浮かんでしまうこのような状態を選択のパラドックスと言います。「人は選択肢が多すぎると一つのものを選ぶのが難しくなり、選択すること自体をやめることもある」という心理作用が出ることが研究の結果でわかっています。
はい、いいえで選べる質問や2択質問(AかBのどちらにしますか?)を日頃から介護者は意識して使って、関わっていくと自己決定や自己選択の機会を作ることにつながります。
- 介護現場での具体的な選択場面
・飲料(飲む時間が選べる、飲み物が選べる、コップが選べる、量が選べるなど)
・活動(体操が選べる、レクが選べる、クラフトが選べる、マシンが選べるなど)
・塗り絵(絵が選べる、道具が選べる、レベルが選べる、大きさが選べるなど)
・入浴(入浴時間が選べる、せっけんが選べる、入浴剤が選べる、タオルが選べるなど)
・食事(料理が選べる、箸が選べる、食器が選べる、ドレッシングが選べるなど)
・衣服(着る服を選べるなど)

薬に頼らない方法
2024-10-07
「まずはお薬」という考え方は止めましょう。「まずはお薬を使わない治療」をやってみて、「それでも効果が乏しければお薬」という考え方をお奨めします。その理由は以下の通りです。
1つ目はいかなる薬にも副作用があること。高齢になると薬の副作用が出やすくなります。
2つ目はお薬を使わなくても対応の方法やちょっとした工夫で症状が軽くなることがあるからです。
3つ目は近年、高齢者で薬の量や種類が多くなる多剤併用が問題となっています。加齢に伴い持病が増えてしまうと、その治療のために薬が増え、多剤併用になりがちです。この多剤併用とフレイルには関連があるとされています。5剤以上服薬している方をポリファーマシー患者といい、多剤を服用することにより有害事象が起こりやすくなる。
・向精神薬
問題行動があるから飲ませるはご法度。介護施設は関われる時間がたくさんありますので、環境を整えたり、工夫をしたりして問題行動を違った側面で行動できるように支援していく。周りに暴言を吐く方がいたら、なぜ暴言を吐くのか?周りが気になる=手を持て余しているのかもしれない。もっと役割を持っていただく等、やれる理由をたくさん探しましょう。やれない理由は探る必要はありません。
・高血圧薬
認知症の方で朝食を食べずに服薬しているケースがあります。そうすることで血圧が低くなり、意識消失につながることもあることを覚えておいてください。送迎時に食べたか確認しても曖昧な場合は食べ物を持参していただく。

歩くだけでは筋力は維持できません。
2024-09-06
歩くことで筋力は鍛えられません。しかし、歩くためにはバランス力、片足で体を支える筋力、足上げ等、必要な動きはたくさんあります。そのためにできることを運動に取り入れていきましょう。その一つは歩幅を広げることです。座りながら足を動かしても実は歩行の動きの向上に結び付いていません。歩行するときには股関節を動かすことが大切です。職員が付き添った状態で立ち、20㎝の台を用意して、足上げする時間を作りましょう。そうすることで股関節の動きを体が覚え、歩幅が広くなります。運動をするときには目的を明確にして行いましょう。集団体操ではやっている人もいればやっていない人、できていない人がいますので、個別訓練が大切です。
筋力運動をすれば何歳になっても筋肉を強くなることがわかっています。スクワットが有効です。スクワットをしてもらうのは難しい方もおられます。であれば立ち上がりを10回していただくことから始めるのも一つの訓練です。

スピーチロック?!
2024-08-06
介護現場で当たり前のように使用している言葉にも身体的、精神的な抑制が潜んでいます。それはスピーチロックで、言葉の拘束ともいわれています。「ちょっと待って」「だめでしょ」と言葉によって身体的、精神的行動を抑制することです。例えば、「トイレに行きたい」「部屋に戻りたい」と言われたとき、忙しい介護現場では「ちょっと待って」ということも多いかと思いますが、この声がけはスピーチロックの一つです。命令によって高齢者の行動を制限していることになります。介護現場の状況によってすぐに対応できない場合もあります。その場合は「~していただけませんか?」と、高齢者に判断をしてもらうような優しい口調や具体的な内容を伝えるようにしましょう。
無意識なスピーチロックに注意する(見かけたり、してしまったりしたときは今後起こさないために共有することが大切です)。相手の立場で考える(嫌だと感じそうな言葉はできるだけ使わないようにしましょう。)ジェスチャーや表情にも気を配る(敬意がこもった言葉遣いや口調に加え、豊富なジェスチャーと柔らかい表情を心掛け、良好な信頼関係を築きましょう)。
スピーチロックがなぜダメなのか?
介護現場でスピーチロックが常態化することで、高齢者のADL(日常生活動作)が低下したり、認知症状が悪化したりなどのリスクを招くおそれがあります。たとえば高齢者が介助者に声をかける度に「待っててね」などの言葉で返答している場合、高齢者の行動意欲がそがれてしまい、徐々に体を動かそうとする意志が失われていく可能性があります。また、「どうして〇〇するの!」など相手を叱咤した場合、適度のストレスにより認知症状の悪化も懸念されます。
高齢者の立場になって考えることで、どのような言葉をかけられると嫌な気持ちになるのか、心が傷つくのかを知るきっかけになります。視点を変えれば、どのような声がけが嬉しいかを考えることもできるでしょう。また、してほしくない行為を高齢者がしたときに、なぜその行動につながったのかを考えることで、声のかけ方も変わってくるはずです。いきなり一方的な叱咤の言葉をぶつけるのではなく、ひと呼吸おいて相手のことを考える意識を持ちましょう。大事なのは、高齢者を尊重する気持ちを第一に持つことです。
〇両手引き歩行介助は介護度悪化に注意。自立支援の介助方法とは
そもそも介助とは何か。介助とは日常生活で支援が必要な人に対して、食事、入浴、移動、排せつなどの生活動作をサポートし、その人がより快適に、また自立した生活を送ることができるように手助けすることです。介助では、ただ助けるだけでなく、今ある能力を活かしてできるだけ自分でできるように関わることが重要です。
歩くこととは、重心を移動させて、進行先に足を出す反復ですが、受動的になると自分で重心の位置を意識しなくなります。そうなると、後方重心や円背変形の進行、尻もち転倒リスクの要因になります。
歩行時に前に引っ張る歩行介助をしてしまうと、介助なしの歩行と違う足運びになります。そうなると、足が出にくくなり、つまづきや転倒リスクの要因になります。また、手を引かれると、自分から動くという意欲が減退します。楽したいという気持ち、おまかせコースでいいやという気持ち、介助者に引っ張られるという屈辱などいろいろな意味でです。そうなると、認知・遂行機能低下、自発性低下につながります。
歩行をする主体は歩いている本人です。その舵取りや重心の移動を妨げてしまうと機能低下につながります。本人が歩いていることを遮らないことが最も自立支援で大切です。介護者が誘導から支えまですべて行ってしまえば時間が短縮できて楽ですが、せっかく歩行を行っているならば主体性を尊重して支援することは大切です。
手をつないで歩くときも利用者様が主体です。介助者が歩いている本人より前を歩く様子をよく目の当たりにしますが、それは介助者主体になっています。ユマニチュードの見る、触れる、話す、立つことを意識した関わりを再度意識していけば真横で常に歩くように意識が変化するはずです。
